インサイドセールス組織の作り方|ゼロから構築する5つのステップ
インサイドセールス組織を立ち上げたいが、何から始めればよいか分からない。そんな悩みを抱える企業は少なくありません。
日本国内のインサイドセールスはまだ黎明期にあります。だからこそ、正しい手順で組織を構築すれば、競合他社に先んじて営業効率を飛躍的に向上させることが可能です。
本記事では、SalesGridが体系化した「科学的アプローチによるインサイドセールス組織の作り方」を5つのステップで徹底解説します。立ち上げフェーズで陥りがちな失敗パターンとその対策も含め、再現性のある組織づくりの全体像をお伝えします。
なぜ今、インサイドセールス組織の構築が必要なのか
日本企業が直面する営業課題とインサイドセールスの役割
BtoB企業の営業現場では、複数の構造的課題が顕在化しています。
| 課題カテゴリ | 具体的な問題 | 影響 |
| 人材不足 | 営業担当者の採用難・離職率上昇 | 商談機会の逸失 |
| 効率低下 | 移動時間・訪問コストの増大 | 生産性の低下 |
| 属人化 | ノウハウが個人に依存 | 再現性の欠如 |
| データ活用 | 顧客情報が分散・未整理 | 戦略的判断の困難 |
インサイドセールスは、これらの課題を解決する戦略的な役割を担います。電話やメール、オンラインツールを活用した非対面での営業活動により、フィールドセールスが商談に集中できる体制を構築。見込み顧客との接点を効率的に創出し、パイプライン全体の最適化を実現します。
組織づくりで失敗する企業の共通点
インサイドセールス導入に失敗する企業には、いくつかの共通パターンがあります。
- 失敗パターン1
- テレアポ部隊との混同 インサイドセールスを単なるアポイント獲得部隊と捉え、顧客との関係構築やリードナーチャリングの視点が欠落しているケースです。
- 失敗パターン2
- 目的の曖昧さ 「他社がやっているから」という理由で導入を進め、自社の営業課題との接続が不明確なまま体制を構築してしまうケースです。
- 失敗パターン3
- 連携設計の不備 マーケティング部門やフィールドセールスとの役割分担が曖昧で、リードの受け渡しやフォローアップが機能しないケースです。
これらの失敗を回避するためには、組織構築の初期段階から科学的なアプローチで設計を進める必要があります。
本記事で得られること ─ 科学的アプローチによる体制構築の全体像
本記事では、インサイドセールス組織をゼロから構築するための5つのステップを順を追って解説します。
- 目的とゴールの設計 ─ 組織づくりの羅針盤を定める
- 体制と役割の設計 ─ 最適な組織構造を描く
- 人材確保と育成の設計 ─ 成果を出すチームを作る
- 業務プロセスとリード管理の構築 ─ 再現性ある仕組みを作る
- PDCAと改善サイクルの確立 ─ 成長し続ける組織へ
各ステップでは、SalesGrid独自のフレームワークやチェックリストを活用し、すぐに実践できる具体的な手順をお伝えします。
【Step 1】目的とゴールの設計 ─ 組織づくりの羅針盤を定める
インサイドセールス組織の成否は、立ち上げ前の設計段階で大きく左右されます。まず取り組むべきは、自社の営業課題を明確化し、インサイドセールス導入の目的を言語化することです。
自社の営業課題を明確化する3つの視点
組織構築に先立ち、以下の3つの視点から自社の営業課題を整理しましょう。
- 視点1:量の課題
- 見込み顧客(リード)の獲得数は十分か
- 商談数は目標に対して充足しているか
- アプローチできていない潜在顧客はどれくらい存在するか
- 視点2:質の課題
- 商談化率・受注率は業界水準と比較してどうか
- リードの確度判定は適切に行われているか
- 営業担当者によるパフォーマンスのばらつきはないか
- 視点3:効率の課題
- 営業担当者の時間配分は適切か(移動・事務作業・商談)
- 顧客データの管理・活用は十分か
- 部門間の情報共有はスムーズに行われているか
これらの課題を数値化し、優先度をつけることで、インサイドセールス導入の方向性が明確になります。
インサイドセールス導入の目的を言語化する
課題の整理ができたら、インサイドセールス導入の目的を具体的に言語化します。目的は大きく3つのパターンに分類できます。
| 目的パターン | 具体例 | 適した体制 |
| 新規開拓強化 | アウトバウンドでの見込み顧客発掘 | BDR中心の体制 |
| 商談効率化 | インバウンドリードの商談化率向上 | SDR中心の体制 |
| 営業プロセス全体最適化 | The Model型の分業体制構築 | BDR+SDR複合体制 |
目的を明文化する際は、「〇〇を△△することで、□□を実現する」という形式で記述することをおすすめします。
例: 「インバウンドリードへの初期対応スピードを向上させることで、商談化率を現状の15%から25%に引き上げ、売上目標の達成を実現する」
KPI設計の基本|立ち上げフェーズで追うべき指標とは
インサイドセールス組織のKPIは、立ち上げフェーズと成熟フェーズで重視すべき指標が異なります。
- 立ち上げ期(0〜6ヶ月):量的指標を重視
- コール数・メール送信数
- 接続率・有効コンタクト率
- アポイント獲得数
- 成長期(6ヶ月〜1年):効率性指標を追加
- 商談化率
- リードタイム(初回接触から商談設定まで)
- BANT情報取得率
- 成熟期(1年以降):収益性指標へシフト
- 受注貢献金額
- 顧客生涯価値(LTV)への貢献
- パイプライン精度
立ち上げ期は成果が出にくい時期です。この段階で受注数などの最終成果だけを追うと、メンバーのモチベーション低下を招きます。行動量を可視化し、プロセス指標で進捗を管理することが重要です。
【SalesGrid式】目的設計チェックリスト
組織構築を始める前に、以下のチェックリストで設計の完成度を確認しましょう。
- 自社の営業課題を量・質・効率の3視点で整理した
- インサイドセールス導入の目的を1文で言語化した
- 目的に対応するKPIを3〜5個設定した
- 立ち上げ期の目標数値を設定した
- 経営層・関連部門との合意を得た
- 6ヶ月後・1年後の到達イメージを共有した
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KPI設計の詳細は、本シリーズ「第3章:KPI設計と目標管理」で解説しています。段階別のKPIテンプレートもダウンロード可能です。

【Step 2】体制と役割の設計|最適な組織構造を描く
目的とゴールが明確になったら、次は具体的な体制設計に進みます。組織規模やフェーズに応じた最適な構造を描き、各メンバーの役割を明確に定義することが成功の鍵です。
組織規模別の体制パターン(1人〜30人)
インサイドセールス組織の体制は、企業規模や事業フェーズによって大きく異なります。以下に代表的なパターンを示します。
パターン1:1〜3名体制(スタートアップ・中小企業)
| 役割 | 担当業務 | ポイント |
| 兼任型IS | リード対応〜商談設定まで一気通貫 | マルチスキルが必要 |
この規模では、1人が複数の役割を兼任するケースがほとんどです。BDR・SDRの区分を設けず、状況に応じて柔軟にアプローチを切り替える体制が現実的です。
パターン2:5〜10名体制(成長期企業)
| 役割 | 人数目安 | 担当業務 |
| SDR | 3〜5名 | インバウンドリード対応 |
| BDR | 2〜3名 | アウトバウンド開拓 |
| マネージャー | 1名 | 全体統括・育成・分析 |
この規模になると、役割分担による専門性の向上が可能になります。SDRとBDRで求められるスキルセットが異なるため、適材適所の人員配置が重要です。
パターン3:15〜30名体制(成熟期企業)
| 役割 | 人数目安 | 担当業務 |
| SDR | 8〜15名 | インバウンド対応(セグメント別) |
| BDR | 4〜8名 | アウトバウンド(業界・規模別) |
| マネージャー | 2〜3名 | チーム別マネジメント |
| オペレーション | 1〜2名 | データ管理・ツール運用 |
大規模体制では、ターゲット属性(業界・企業規模・地域など)によるチーム分けが効果的です。また、オペレーション専任者を配置することで、メンバーが営業活動に集中できる環境を整備します。
BDR・SDRの役割分担と人材要件の定義
インサイドセールスの代表的な役割であるBDR(Business Development Representative)とSDR(Sales Development Representative)について、それぞれの特徴を整理します。
BDR(アウトバウンド型)
- 主な業務:ターゲットリストへの能動的なアプローチ
- 求められるスキル:開拓力、粘り強さ、市場・業界理解
- 適性:新規開拓への意欲が高い、拒絶への耐性がある
- KPI例:架電数、有効コンタクト数、商談創出数
SDR(インバウンド型)
- 主な業務:問い合わせ・資料請求への対応、リード精査
- 求められるスキル:傾聴力、課題発見力、スピード感
- 適性:丁寧なコミュニケーションができる、顧客ニーズへの感度が高い
- KPI例:対応スピード、商談化率、BANT取得率
両者は求められるスキルセットが異なるため、採用・育成においても区別して考える必要があります。
マーケティング・フィールドセールスとの連携設計
インサイドセールス組織は、単独で機能するものではありません。マーケティング部門からのリード供給、フィールドセールスへの商談引き継ぎという連携が不可欠です。
マーケティングとの連携ポイント
- リード定義の統一(MQL・SQLの基準明確化)
- リード流入の予測共有(施策スケジュール・想定件数)
- フィードバックループの構築(リード品質の定期的な振り返り)
フィールドセールスとの連携ポイント
- 商談引き継ぎ基準の明文化(BANT情報の取得レベル)
- 引き継ぎフォーマットの標準化
- 受注・失注結果のフィードバック共有
- 定期的な連携ミーティングの実施
連携がうまくいかない場合、リードの取りこぼしや商談品質の低下を招きます。組織設計の段階から、部門間の情報共有の仕組みを整備しておくことが重要です。
【SalesGrid式】体制設計フレームワーク
体制設計を進める際は、以下のフレームワークに沿って検討を進めましょう。
- 配置可能な人員数
- 既存メンバーのスキルセット
- 活用可能なツール・システム
- 必要な役割(BDR/SDR/マネージャー/オペレーション)
- 各役割の担当業務範囲
- 責任と権限の明確化
- マーケティングからのリード受領フロー
- フィールドセールスへの引き継ぎフロー
- カスタマーサクセスとの情報共有フロー
- 6ヶ月後・1年後の想定体制
- 拡大のトリガー条件(KPI達成など)
- 採用・育成のタイムライン
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体制設計フレームワークの詳細版は、eBook「インサイドセールス立ち上げ完全ガイド」に収録しています。組織規模別のサンプル構成図も含まれていますので、ぜひご活用ください。

【Step 3】人材確保と育成の設計 ─ 成果を出すチームを作る
インサイドセールス組織の成否を分けるのは、人材です。適切なスキルを持つメンバーを確保し、継続的に育成する仕組みを構築することで、成果を出し続けるチームを作ります。
インサイドセールス人材に求められるスキルとは
インサイドセールスで成果を出すためには、複合的なスキルが求められます。SalesGridでは、5つの軸でスキルを体系化しています。
- 信頼構築スキル
- 事前リサーチに基づく的確なアプローチ
- 共感・理解を示すコミュニケーション
- 専門性を感じさせる知識・説明力
- 課題発見スキル
- 効果的なヒアリング技術
- 潜在ニーズを引き出す質問力
- 課題の構造的な整理・言語化
- 価値提案スキル
- 課題と解決策の結びつけ
- 具体的な事例・数値を用いた説明
- ROIを明確にした提案
- 差別化スキル
- 競合との違いを明確に伝える力
- 自社製品・サービスの強みの理解
- 顧客の懸念への先回り対応
- クロージングスキル
- 適切なタイミングでの商談提案
- 決裁プロセスの把握と対応
- 次のアクションへの誘導
立ち上げ期は、すべてのスキルを高いレベルで備えた人材を確保することは困難です。まずは「信頼構築」と「課題発見」を重視し、他のスキルは業務を通じて育成する方針が現実的です。
採用で見るべきポイントと面接設計
インサイドセールス人材の採用では、経験よりも適性を重視することをおすすめします。
重視すべき適性
| 適性 | 確認方法 | 具体的な質問例 |
| 傾聴力 | 面接中の対話 | 「前職で最も大変だった経験を教えてください」への深掘り |
| 粘り強さ | 過去エピソード | 「困難な状況をどう乗り越えましたか」 |
| 学習意欲 | 自己研鑽の実績 | 「最近学んだこと、取り組んでいることは」 |
| 論理的思考 | ケース問題 | 「この商材を〇〇業界に提案するなら、どうアプローチしますか」 |
| ストレス耐性 | 過去経験 | 「断られ続けた経験と、その時どう対処しましたか」 |
採用時の注意点
営業経験者を採用する場合、フィールドセールス出身者がインサイドセールスの業務スタイルに馴染めないケースがあります。対面での商談に慣れた人材は、電話やメールでの非対面コミュニケーションに戸惑うことも少なくありません。
経験よりも、インサイドセールスという仕事への理解と意欲を重視した採用判断が、立ち上げ期には特に重要です。
立ち上げフェーズの育成プログラム設計
新メンバーを短期間で戦力化するためには、体系的な育成プログラムが不可欠です。以下は、3ヶ月間の育成プログラムの一例です。
- 自社商材・サービスの理解
- 業界・競合の基礎知識
- インサイドセールスの役割・位置づけ
- ツール(CRM/SFA/電話システム)の操作方法
- トークスクリプトの理解・練習
- 先輩メンバーとのロールプレイング
- 録音を活用したフィードバック
- よくある反論への対応練習
- 実際のリードへのアプローチ開始
- 先輩メンバーの同席・モニタリング
- 日次での振り返り・改善
- 週次での進捗確認・目標調整
- 目標達成への主体的な取り組み
- 成功・失敗事例の共有
- 個別課題への集中的な改善
スキルマップによる成長管理の手順
メンバーの成長を可視化し、継続的な育成を行うためには、スキルマップの活用が効果的です。
スキルマップの作成手順
- 評価軸の設定:前述の5軸スキル(信頼構築・課題発見・価値提案・差別化・クロージング)を評価軸とする
- レベル定義の設定:各スキルを5段階で定義
| レベル | 定義 |
| Level 1 | 基本的な理解はあるが実行が困難 |
| Level 2 | サポートがあれば実行可能 |
| Level 3 | 単独で基本的な実行が可能 |
| Level 4 | 安定的に成果を出せる |
| Level 5 | 他メンバーを指導できる |
- 定期評価の実施:月次でスキルレベルを評価し、成長を可視化
- 個別育成計画の策定:弱点領域を特定し、改善アクションを設定
スキルマップを活用することで、メンバーごとの強み・弱みが明確になり、効果的な育成計画を立てることができます。また、キャリアパスの可視化にもつながり、メンバーのモチベーション向上にも寄与します。
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スキルマップ評価シートのテンプレートは、本シリーズ「第7章:マネジメントと人材育成」で詳しく解説しています。テンプレートをダウンロードいただきご活用いただけますと幸いです。

【Step 4】業務プロセスとリード管理の構築 ─ 再現性ある仕組みを作る
人材が揃ったら、次は業務プロセスの標準化です。属人的なノウハウに依存せず、誰がやっても一定水準の成果を出せる仕組みを構築することが、組織としての再現性を高めます。
リードマネジメントの基本フローを設計する
インサイドセールスの業務は、リードの流入から商談化までの一連のプロセスで構成されます。まずは基本フローを明確に定義しましょう。
基本フローの例
リード流入 → 初期接触 → ニーズ調査 → 確度判定 → 商談設定 → 引き継ぎ
各ステップで実行すべきアクションと、次のステップへ進む条件を明文化することが重要です。
| ステップ | 実行アクション | 次ステップへの条件 |
| 初期接触 | 24時間以内にコール・メール | 接続成功 |
| ニーズ調査 | 現状・課題のヒアリング | 課題の顕在化確認 |
| 確度判定 | BANT情報の取得 | 条件クリア |
| 商談設定 | 日程調整・アポイント確定 | 商談日時確定 |
| 引き継ぎ | 情報共有・フォローアップ | FS受領確認 |
顧客フェーズ定義と管理ルールの策定
見込み顧客(リード)の状態を適切に管理するためには、フェーズの定義が不可欠です。SalesGridでは、顧客の心理状態に基づいた7段階のフェーズモデルを提唱しています。
顧客フェーズの基本定義
| フェーズ | 顧客の状態 | ISのアクション |
| Phase 1 | 無関心・拒絶 | 軽いタッチで関係構築 |
| Phase 2 | 受動的受容 | 価値情報の提供 |
| Phase 3 | 軽度関心 | 課題の顕在化促進 |
| Phase 4 | 積極関心 | 詳細ヒアリング |
| Phase 5 | 検討開始 | 比較検討の支援 |
| Phase 6 | 導入意思固め | 具体的条件の調整 |
| Phase 7 | 商談準備完了 | FS引き継ぎ |
各フェーズの判定基準を明確にし、CRM/SFA上で管理することで、パイプラインの可視化と精度の高い予測が可能になります。
トークスクリプトと業務マニュアルの整備
再現性のある営業活動を実現するためには、トークスクリプトと業務マニュアルの整備が不可欠です。
トークスクリプトの構成要素
SalesGrid式では、7段階のトーク構造を採用しています。
- オープニング(15〜30秒):自己紹介・目的・時間確認
- アイスブレイク(30秒〜2分):事前調査言及・関係構築
- ヒアリング(2〜5分):現状・課題の把握
- 価値提案(3〜5分):解決策・事例の提示
- 差別化(1〜2分):競合優位性の説明
- クロージング(1〜2分):次回アクションの設定
- フォローアップ:関係継続・資料送付
業務マニュアルに含めるべき項目
- 1日の業務フロー・タイムスケジュール
- 各ツールの操作手順
- よくある質問への回答集(FAQ)
- エスカレーションルール
- 報告・共有のルール
スクリプトやマニュアルは、一度作成したら終わりではありません。実践の中で発見した改善点を随時反映し、継続的にアップデートすることが重要です。
CRM/SFAを活用したデータ管理体制の構築
インサイドセールス組織の運営には、適切なツール活用が欠かせません。CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)を導入し、データドリブンな活動基盤を構築しましょう。
ツール選定のポイント
| 評価軸 | 確認ポイント |
| 使いやすさ | 現場メンバーが抵抗なく使えるか |
| 連携性 | MA、電話システムとの連携は可能か |
| カスタマイズ性 | 自社のプロセスに合わせた設定ができるか |
| レポート機能 | 必要な分析・レポートが出力できるか |
| コスト | 初期費用・月額費用は予算内か |
入力ルールの標準化
ツールを導入しても、データの入力が徹底されなければ意味がありません。以下のような入力ルールを明文化し、チーム全体で遵守する文化を醸成しましょう。
- コール結果は終話後5分以内に入力
- 顧客とのやり取りは要点を必ず記録
- フェーズ変更は即時反映
- 次回アクション予定は必ず設定
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トークスクリプトのテンプレート(BDR/SDR別・8シーン対応)は、「インサイドセールス立ち上げ完全ガイド」の企画で収録しています。すぐに使える実践的なサンプルとしてご活用ください。

【Step 5】PDCAと改善サイクルの確立 ─ 成長し続ける組織へ
組織を立ち上げたら、それで終わりではありません。継続的な改善サイクルを回し、組織のパフォーマンスを向上させ続けることが、成熟した組織への道です。
週次・月次レビューの進め方
改善サイクルの基盤となるのが、定期的なレビューミーティングです。
週次レビューのアジェンダ例
| 項目 | 内容 | 時間目安 |
| KPI進捗確認 | 目標対比での進捗状況 | 10分 |
| 成功事例共有 | 今週うまくいったケース | 10分 |
| 課題・困りごと | 発生している問題の共有 | 15分 |
| 改善アクション | 次週への改善施策 | 10分 |
| 連絡事項 | 社内共有・スケジュール | 5分 |
月次レビューのアジェンダ例
| 項目 | 内容 | 時間目安 |
| 月次KPI振り返り | 目標達成状況の分析 | 20分 |
| パイプライン分析 | フェーズ別の状況確認 | 15分 |
| 戦略・施策の検証 | 実施施策の効果測定 | 20分 |
| 翌月計画策定 | 目標・施策の設定 | 20分 |
| 個人別フィードバック | メンバーごとの振り返り | 各10分 |
レビューの場では、感覚的な議論ではなく、データに基づいた客観的な分析を心がけましょう。
課題発見と施策立案のフレームワーク
改善を進めるためには、課題を正しく特定し、効果的な施策を立案するフレームワークが必要です。
課題特定の3ステップ
- 数値の異常を発見する
- KPIの目標対比での乖離
- 過去データとの比較での変化
- メンバー間での大きなばらつき
- 原因を深掘りする
- 「なぜ」を5回繰り返す
- 定量データと定性情報の両面から分析
- 仮説を立てて検証する
- 優先度をつける
- 影響度(改善した場合のインパクト)
- 実現可能性(すぐに着手できるか)
- 緊急度(放置した場合のリスク)
施策立案のポイント
- 1つの課題に対して複数の施策案を検討する
- 小さく始めて効果を検証する(A/Bテスト)
- 施策の効果測定方法を事前に決めておく
- 期限を設定し、PDCAを回す
立ち上げ期から成長期への移行ポイント
インサイドセールス組織は、立ち上げ期を経て成長期へと移行します。この移行をスムーズに行うためのポイントを押さえておきましょう。
移行のサイン
- 行動KPI(コール数など)が安定的に達成される
- 商談化率が一定水準に到達
- メンバーが自走して業務を回せる
- 基本的なプロセスが定着している
移行時に見直すべき項目
| 項目 | 立ち上げ期 | 成長期 |
| 重視KPI | 行動量(コール数など) | 効率性(商談化率など) |
| マネジメントスタイル | 密着型・指導重視 | 自律型・支援重視 |
| 育成方針 | 基礎スキルの習得 | 専門スキルの深化 |
| 目標設定 | 保守的・達成可能 | チャレンジング |
成長期への移行を急ぎすぎると、基盤が不安定なまま拡大してしまい、後々問題が発生します。立ち上げ期の成功体験を十分に積み重ねてから、次のフェーズへ進むことをおすすめします。
【SalesGrid式】継続改善チェックリスト
組織の改善状況を定期的に確認するためのチェックリストです。月次での振り返りにご活用ください。
- 週次・月次レビューが定期的に実施されている
- KPIの進捗がリアルタイムで可視化されている
- 課題が数値に基づいて特定されている
- 改善施策が計画的に実行されている
- 施策の効果が検証されている
- 成功事例・失敗事例がチーム内で共有されている
- スクリプト・マニュアルが定期的に更新されている
- メンバーの成長が可視化・支援されている
組織規模・フェーズ別の構築サンプル
ここでは、実際の組織構築をイメージしやすくするため、規模別のサンプル事例を紹介します。

【サンプル1】スタートアップ(1〜3名体制)の立ち上げ事例
企業概要
- 業種:BtoB SaaS
- 従業員数:30名
- 営業体制:フィールドセールス3名、マーケティング1名
課題
- フィールドセールスがリード対応から商談まで一気通貫で対応
- リードへの初期対応が遅れがち
- 営業担当者の負荷が高く、商談に集中できない
構築した体制
| 役割 | 人数 | 担当業務 |
| IS兼任者 | 1名 | インバウンドリード対応、商談設定 |
ポイント
- まず1名でスモールスタート
- マーケティングからのインバウンドリード対応に特化
- CRMを活用し、リード管理を標準化
- フィールドセールスへの引き継ぎ基準を明文化
成果
- リードへの初期対応時間:24時間以内を達成
- 商談化率:導入前15%→導入後28%
- フィールドセールスの商談数:1.5倍に増加
【サンプル2】中堅企業(10〜20名体制)の組織拡大事例
企業概要
- 業種:ITサービス
- 従業員数:200名
- 営業体制:フィールドセールス15名、マーケティング5名
課題
- インサイドセールスを導入済みだが、成果にばらつき
- メンバーの育成が属人的
- マーケティング・フィールドセールスとの連携が不十分
再構築した体制
| 役割 | 人数 | 担当業務 |
| SDR | 8名 | インバウンドリード対応(セグメント別) |
| BDR | 4名 | アウトバウンド開拓(業界別) |
| マネージャー | 2名 | チーム別マネジメント |
| オペレーション | 1名 | データ管理・ツール運用 |
ポイント
- SDRとBDRを明確に分離し、専門性を向上
- ターゲット業界別のチーム編成
- スキルマップによる育成の標準化
- マーケティング・FSとの連携ミーティングを週次で実施
成果
- 商談創出数:前年比180%
- 商談化率のばらつき:標準偏差が50%減少
- メンバー満足度:向上(離職率低下)
自社に適した体制を選ぶための判断基準
自社に最適な体制を選ぶためには、以下の判断基準を参考にしてください。
- 判断基準1:リード供給量
- 月間100件未満:1〜3名体制で十分
- 月間100〜500件:5〜10名体制を検討
- 月間500件以上:10名以上の体制が必要
- 判断基準2:商材の複雑性
- シンプルな商材:効率重視の分業体制
- 複雑な商材:深い理解が必要なため少数精鋭
- 判断基準3:営業サイクルの長さ
- 短期(1ヶ月以内):SDR中心でスピード重視
- 長期(3ヶ月以上):ナーチャリング機能を重視
- 判断基準4:既存営業体制との整合性
- フィールドセールスが強い:IS はリード精査に特化
- マーケティングが強い:IS は商談設定に特化
インサイドセールス組織構築でよくある失敗と対策
最後に、組織構築でよくある失敗パターンと、その対策を整理します。
失敗パターン①:目的が曖昧なまま導入を進める
症状
- 「他社がやっているから」という理由で導入
- 何を達成すればよいか分からない
- メンバーのモチベーションが上がらない
対策
- 導入目的を1文で言語化する
- 目的に紐づくKPIを設定する
- 経営層・関連部門との合意形成を徹底する
- 定期的に目的を振り返り、ブレがないか確認する
失敗パターン②:人材育成を後回しにする
症状
- 「とりあえずやってみて」で放置
- スキルのばらつきが大きい
- 離職率が高い
対策
- 体系的な育成プログラムを設計する
- スキルマップで成長を可視化する
- 定期的な1on1でフォローアップする
- 成功体験を積ませる仕組みを作る
失敗パターン③:フィールドセールスとの連携が機能しない
症状
- 引き継いだ商談が進まない
- フィールドセールスから「リードの質が低い」と不満
- お互いに責任を押し付け合う
対策
- 引き継ぎ基準(BANT取得レベルなど)を明文化する
- 引き継ぎフォーマットを標準化する
- 受注・失注のフィードバックループを構築する
- 定期的な連携ミーティングで認識を揃える
失敗を防ぐための3つの原則
これらの失敗を防ぐために、以下の3つの原則を心がけましょう。
- 目的起点で設計する
- すべての判断は「何のためにインサイドセールスを導入するのか」という目的に立ち返って行う。
- 小さく始めて大きく育てる
- 最初から完璧な体制を目指さず、スモールスタートで成功体験を積み重ねる。
- データで語り、データで改善する
- 感覚や経験だけに頼らず、数値に基づいた客観的な判断と改善を行う。
まとめ:科学的アプローチで再現性ある組織を構築する
本記事では、インサイドセールス組織をゼロから構築するための5つのステップを解説しました。
| ステップ | 内容 | 重要ポイント |
| Step 1 | 目的とゴールの設計 | 自社課題の明確化、目的の言語化、KPI設計 |
| Step 2 | 体制と役割の設計 | 規模別体制、役割定義、連携設計 |
| Step 3 | 人材確保と育成の設計 | スキル要件、採用、育成プログラム |
| Step 4 | 業務プロセスとリード管理の構築 | フロー設計、スクリプト、ツール活用 |
| Step 5 | PDCAと改善サイクルの確立 | レビュー、課題発見、継続改善 |
これらのステップを順を追って実行することで、属人性を排除し、再現性のあるインサイドセールス組織を構築することができます。
次のアクション ─ 立ち上げチェックリストの活用
本記事で紹介したフレームワークやチェックリストを活用し、自社のインサイドセールス組織構築を進めてください。
まずは以下のアクションから始めることをおすすめします。
- 自社の営業課題を整理する(量・質・効率の3視点)
- インサイドセールス導入の目的を言語化する
- 現状リソースを棚卸しし、初期体制を設計する
- 立ち上げ期のKPIを設定する
- 関連部門との合意形成を行う
SalesGridが提供する組織構築支援
SalesGridでは、インサイドセールス組織の立ち上げ・運用を支援するさまざまなリソースを提供しています。
📘 関連資料 eBook「インサイドセールス立ち上げ完全ガイド」
本シリーズの内容を体系的にまとめたeBookを無料でダウンロードいただけます。組織構築チェックリスト、KPI設計テンプレート、トークスクリプトサンプルなど、すぐに使える実践的なツールが収録されています。

インサイドセールス組織の構築は、一朝一夕で完成するものではありません。しかし、科学的なアプローチで一歩ずつ積み重ねていくことで、必ず成果を出せる組織を作ることができます。本記事が、皆様のインサイドセールス組織構築の一助となれば幸いです。
よくあるご質問
質問:インサイドセールス組織の立ち上げにはどれくらいの期間がかかりますか?
回答:組織規模や目的によって異なりますが、一般的には3〜6ヶ月が目安です。最初の1〜2ヶ月で目的設計・体制構築・人材確保を行い、その後2〜3ヶ月で業務プロセスの整備と実践を通じた改善を進めます。成熟した組織として安定的に成果を出せるようになるまでには、1年程度を見込むことをおすすめします。立ち上げ期は成果が出にくい時期ですので、行動量を重視したKPI設計で焦らずに進めることが重要です。
質問:インサイドセールス組織は何名から始めるのが適切ですか?
回答:まずは1〜3名からのスモールスタートをおすすめします。最初から大規模な体制を構築すると、プロセスが確立される前にメンバーが増えてしまい、属人的なやり方が乱立するリスクがあります。少人数で成功パターンを確立し、それを標準化してから段階的に拡大する方が、結果的に効率的な組織構築につながります。月間リード数が100件未満であれば1〜3名、100〜500件であれば5〜10名が目安となります。
質問:インサイドセールスの人材は経験者を採用すべきですか?
回答:必ずしも経験者である必要はありません。むしろ立ち上げ期は、経験よりも適性を重視した採用をおすすめします。傾聴力、粘り強さ、学習意欲、論理的思考、ストレス耐性といった適性があれば、未経験者でも3ヶ月程度の育成で戦力化することが可能です。フィールドセールス経験者は対面営業に慣れているため、非対面のインサイドセールスに馴染めないケースもあります。インサイドセールスという仕事への理解と意欲を重視した採用判断が重要です。
質問:インサイドセールスとフィールドセールスの連携がうまくいきません。どうすればよいですか?
回答:連携がうまくいかない主な原因は、引き継ぎ基準の曖昧さと相互理解の不足です。まず、商談引き継ぎの基準(BANT情報の取得レベルなど)を明文化し、双方で合意してください。次に、引き継ぎフォーマットを標準化し、必要な情報が漏れなく共有される仕組みを作ります。そして、受注・失注のフィードバックをインサイドセールスに戻すループを構築することで、リード品質の継続的な改善が可能になります。週次での連携ミーティングを設定し、定期的に認識を揃えることも効果的です。
質問:インサイドセールス組織のKPIはどのように設計すればよいですか?
回答:KPIは組織のフェーズによって重視すべき指標が異なります。立ち上げ期(0〜6ヶ月)はコール数・メール送信数・接続率などの行動量を重視します。この段階で受注数などの最終成果だけを追うと、成果が出ない時期にメンバーのモチベーションが低下してしまいます。成長期(6ヶ月〜1年)になったら、商談化率・リードタイム・BANT取得率などの効率性指標を追加します。成熟期(1年以降)は、受注貢献金額・LTV貢献・パイプライン精度などの収益性指標にシフトしていきます。各フェーズで適切な指標を設定し、段階的にレベルアップしていくことが重要です。

