【テンプレート付】インサイドセールスの目標設定と進捗管理シート
インサイドセールス組織の成果は、目標設定の質で決まると言っても過言ではありません。しかし多くの企業では、「なんとなく前年比で設定している」「達成できない目標が形骸化している」「進捗管理が属人的になっている」といった課題を抱えています。
本記事では、SalesGridが提唱する「営業を科学する」アプローチに基づき、インサイドセールスの目標設定から進捗管理までを体系的に解説します。すぐに活用できるテンプレートも提供しますので、自社の状況に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。
なぜインサイドセールスの目標設定が成果を左右するのか
属人的な営業から「再現性ある組織」への転換点
インサイドセールスを立ち上げる最大の目的は、属人的な営業活動から脱却し、再現性のある成果創出の仕組みを構築することにあります。そしてその仕組みの根幹を成すのが、科学的な目標設定です。
従来の営業組織では、「できる営業」の勘と経験に依存し、成功要因がブラックボックス化していました。インサイドセールスでは、リード獲得から商談化、受注に至るまでのプロセスを可視化し、各フェーズにKPIを設定することで、誰が見ても進捗状況を把握できる体制を構築できます。
この転換を実現するためには、単に数値目標を設定するだけでなく、その目標がなぜその数値なのか、どのような行動によって達成されるのかを明確に定義する必要があります。
目標設定の失敗がもたらす3つの弊害
目標設定が適切でない場合、組織には以下のような弊害が生じます。
- メンバーのモチベーション低下
- 達成不可能な目標や、逆に簡単すぎる目標は、メンバーの成長意欲を削ぎます。「どうせ無理」「やっても意味がない」という空気が蔓延すると、チーム全体のパフォーマンスが低下します。
- リソース配分の最適化ができない
- 目標と実績の乖離原因が分析できなければ、どこにリソースを投下すべきか判断できません。結果として、効果の薄い施策に時間と工数を浪費することになります。
- 他部門との連携が困難になる
- マーケティング部門やフィールドセールス部門との連携には、共通の指標と目標が不可欠です。インサイドセールスの目標が曖昧だと、リードの質や商談の引き継ぎ基準について認識のずれが生じ、組織全体の生産性が低下します。
SalesGrid式「科学的目標設計」の基本思想
SalesGridが提唱する科学的目標設計は、以下の3つの原則に基づいています。
| 原則 | 内容 |
| 逆算思考 | 最終的な受注目標から逆算し、各フェーズで必要な数値を算出する |
| 階層構造 | 戦略KPI・戦術KPI・行動KPIの3階層で目標を設計する |
| 継続的改善 | データに基づくPDCAサイクルで目標と施策を最適化する |
これらの原則を実践することで、「なぜこの目標なのか」「どうすれば達成できるのか」が明確になり、メンバー一人ひとりが納得感を持って活動できる組織を構築できます。
インサイドセールスのKGI・KPI設計の基本フレームワーク
KGIとKPIの違いを正しく理解する
目標設定において最も重要なのは、KGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)の違いを正しく理解することです。
KGI(重要目標達成指標) は、最終的に達成すべきゴールを示す指標です。インサイドセールスにおいては、受注金額、受注件数、商談創出数などがKGIに該当します。
KPI(重要業績評価指標) は、KGIを達成するためのプロセスを測定する指標です。架電数、接続率、商談化率などがKPIに該当します。
両者の関係を整理すると以下のようになります。
| 区分 | 定義 | インサイドセールスでの例 |
| KGI | 最終目標 | 月間受注金額3,000万円、商談創出50件 |
| KPI | プロセス指標 | 架電数、接続率、商談化率、有効商談数 |
KGIだけを追いかけても、具体的に何をすればよいのか分かりません。KPIを設定することで、日々の行動レベルに目標を落とし込むことができます。
戦略KPI・戦術KPI・行動KPIの3階層構造
SalesGridでは、KPIを3つの階層で設計することを推奨しています。この階層構造により、経営層から現場メンバーまで、それぞれの役割に応じた目標管理が可能になります。
- 戦略KPI(組織全体の成果指標)
- 受注金額・受注件数
- LTV(顧客生涯価値)
- CAC(顧客獲得コスト)
- パイプライン予測精度
- 戦術KPI(チーム・個人の成果指標)
- 商談創出数・商談化率
- SQL(Sales Qualified Lead)数
- BANT情報取得率
- 引継ぎ商談の成約率
- 行動KPI(日次・週次で管理する活動指標)
- 架電数・接続率
- メール送信数・開封率・返信率
- 有効コンタクト数
- フォローアップ実行率
この3階層を意識することで、「なぜこの行動が必要なのか」を戦略レベルから説明でき、メンバーの納得感と主体性を高めることができます。
受注から逆算する目標設定の手順
効果的な目標設定は、最終ゴールから逆算して行います。以下の手順で進めましょう。
まず、事業計画に基づく受注目標を確認します。月間受注金額、受注件数、新規・既存の内訳などを明確にします。
過去のデータを分析し、商談から受注に至る割合(受注率)を把握します。受注目標を受注率で割ることで、必要な商談数が算出できます。
必要商談数 = 受注目標件数 ÷ 受注率
例:月間受注10件 ÷ 受注率25% = 必要商談40件
商談化率を把握し、必要なリード対応数(有効コンタクト数)を算出します。
必要リード対応数 = 必要商談数 ÷ 商談化率
例:必要商談40件 ÷ 商談化率10% = 必要リード対応400件
最終的に、日々の活動目標である架電数まで落とし込みます。
必要架電数 = 必要リード対応数 ÷ 接続率
例:必要リード対応400件 ÷ 接続率30% = 必要架電約1,333件/月
部門間連携を意識した指標の定義方法
インサイドセールスは、マーケティング部門とフィールドセールス部門の間に位置する組織です。そのため、両部門との連携を意識した指標定義が不可欠です。
マーケティング部門との連携指標
| 指標 | 定義 | 活用方法 |
| リード供給数 | マーケティングから引き渡されるリード件数 | キャパシティ計画の基礎データ |
| リード品質スコア | リードの確度を数値化したもの | 優先順位付けとフィードバック |
| チャネル別商談化率 | 流入経路ごとの商談化率 | マーケティング施策の効果測定 |
フィールドセールス部門との連携指標
| 指標 | 定義 | 活用方法 |
| 引継ぎ商談品質スコア | BANT情報の充足度を数値化 | 引継ぎ基準の明確化 |
| 引継ぎ後成約率 | IS起点商談の成約率 | 商談品質の評価 |
| 営業フィードバック | FSからの評価・改善要望 | 連携プロセスの改善 |
これらの指標を定期的に共有し、部門間で合意形成を行うことで、組織全体の最適化が実現します。
インサイドセールスで設定すべきKPI項目一覧
リード対応フェーズの指標(架電数・接続率・コンタクト率)
リード対応フェーズでは、見込み顧客へのアプローチ活動を測定します。このフェーズのKPIは、活動量と効率性の両面から設計します。
| KPI項目 | 定義 | 目安値 | 計算方法 |
| 架電数 | 発信した電話の総数 | 80-120件/日 | 実測値 |
| 着電率 | 電話が鳴った割合 | 85-95% | 着電数÷架電数×100 |
| 接続率 | 担当者と会話できた割合 | 20-35% | 接続数÷架電数×100 |
| コネクト率 | 有効な会話ができた割合 | 15-25% | 有効コンタクト数÷架電数×100 |
| 通話時間 | 1コールあたりの平均通話時間 | 3-5分 | 総通話時間÷接続数 |
ポイント:架電数だけを追わない
架電数は活動量を示す基本指標ですが、これだけを追いかけると「数を稼ぐだけの電話」になりがちです。接続率やコネクト率と組み合わせて、量と質のバランスを評価しましょう。
商談創出フェーズの指標(商談化率・有効商談数・BANT取得率)
商談創出フェーズは、インサイドセールスの最も重要な成果を測定するフェーズです。
| KPI項目 | 定義 | 目安値 | 計算方法 |
| 商談化率 | リード対応から商談設定に至る割合 | 5-15% | 商談設定数÷有効コンタクト数×100 |
| 有効商談数 | 基準を満たした商談の件数 | 組織により異なる | フィルタリング後の件数 |
| BANT取得率 | BANT情報を取得できた割合 | 70-85% | BANT取得商談数÷総商談数×100 |
| アポイント設定率 | 商談日程を確定できた割合 | 80-90% | 日程確定数÷商談合意数×100 |
BANT情報とは
BANTは、商談の確度を判断するためのフレームワークです。
- Budget(予算):導入予算の有無と規模
- Authority(決裁権):意思決定者・決裁プロセス
- Need(ニーズ):課題の緊急性と重要性
- Timing(導入時期):検討・導入のスケジュール
メール活用の指標(送信数・開封率・返信率・クリック率)
電話だけでなく、メールを活用したアプローチも重要なチャネルです。特にインバウンドリードへのフォローや、電話が繋がらない場合のフォローアップに活用します。
| KPI項目 | 定義 | 目安値 | 計算方法 |
| メール送信数 | 送信したメールの総数 | 30-50件/日 | 実測値 |
| 開封率 | メールが開封された割合 | 20-35% | 開封数÷送信数×100 |
| クリック率 | リンクがクリックされた割合 | 3-8% | クリック数÷送信数×100 |
| 返信率 | 返信があった割合 | 5-15% | 返信数÷送信数×100 |
ポイント:件名と送信タイミングの最適化
開封率を高めるには、件名の工夫と送信タイミングの最適化が重要です。A/Bテストを実施し、自社のターゲットに最適なパターンを見つけましょう。
成果フェーズの指標(受注率・受注貢献額・LTV)
成果フェーズでは、インサイドセールス活動が最終的にどれだけの売上貢献をしたかを測定します。
| KPI項目 | 定義 | 目安値 | 計算方法 |
| 受注率 | 商談から受注に至る割合 | 20-35% | 受注数÷商談数×100 |
| 受注貢献額 | IS起点の受注金額 | 組織により異なる | IS創出商談の受注額合計 |
| 平均受注単価 | 1件あたりの受注金額 | 商材により異なる | 受注総額÷受注件数 |
| LTV | 顧客生涯価値 | 商材により異なる | 平均月額×継続月数 |
効率性・品質の指標(リードタイム・引継ぎ商談品質スコア)
効率性と品質を測定する指標も、組織の持続的な成長には欠かせません。
| KPI項目 | 定義 | 目安値 | 計算方法 |
| リード対応時間 | リード発生から初回接触までの時間 | 5分以内 | 平均対応時間 |
| 商談リードタイム | リード発生から商談化までの期間 | 7-14日 | 平均期間 |
| 引継ぎ品質スコア | 商談引継ぎの品質評価 | 4.0/5.0以上 | FSからの評価平均 |
| 商談キャンセル率 | 設定商談がキャンセルになる割合 | 10%以下 | キャンセル数÷商談設定数×100 |
組織フェーズ別の目標設定方法
立ち上げ期(0-6ヶ月):量を追う目標設計
インサイドセールスの立ち上げ期は、まずは活動量を確保し、データを蓄積することが最優先です。この段階では、行動KPIを重視した目標設計を行います。
立ち上げ期の重点KPI
| 優先度 | KPI項目 | 目標設定の考え方 |
| ★★★ | 架電数 | メンバー1人あたり80-100件/日を目安に設定 |
| ★★★ | リスト消化率 | 週次で供給リストの消化状況を管理 |
| ★★☆ | 接続率 | 業界平均値を参考に初期目標を設定 |
| ★★☆ | 商談設定数 | 現実的な数値からスタートし、徐々に引き上げ |
| ★☆☆ | 商談化率 | まずは測定・記録を優先、改善は成長期から |
立ち上げ期のマネジメントポイント
- 日次での密なコミュニケーションと指導を実施
- 成功体験を積み重ね、メンバーのモチベーションを維持
- 標準プロセスの構築と例外処理ルールの明確化
- データ収集の徹底(後の分析・改善に活用)
成長期(6ヶ月-1年):効率性を加味した目標設計
立ち上げ期でデータが蓄積されたら、効率性を加味した目標設計に移行します。量だけでなく、質を追求するフェーズです。
成長期の重点KPI
| 優先度 | KPI項目 | 目標設定の考え方 |
| ★★★ | 商談化率 | 立ち上げ期の実績から10-20%向上を目標に |
| ★★★ | 有効商談数 | 商談の質を担保しながら件数増を狙う |
| ★★☆ | BANT取得率 | 70%以上の取得率を目指す |
| ★★☆ | 引継ぎ品質スコア | FSからのフィードバックを定量化 |
| ★☆☆ | 受注貢献額 | IS起点商談の受注追跡を開始 |
成長期のマネジメントポイント
- 週次でのKPI分析と改善アクションの実施
- 個人別の強み・弱みを把握し、育成計画を策定
- トークスクリプトの最適化とA/Bテストの実施
- ベストプラクティスの共有と横展開
成熟期(1年以降):収益性・LTV重視の目標設計
成熟期では、収益性とLTVを重視した目標設計に進化させます。単なる商談数ではなく、質の高い商談を創出することに注力します。
成熟期の重点KPI
| 優先度 | KPI項目 | 目標設定の考え方 |
| ★★★ | 受注貢献額 | IS経由の受注金額で評価 |
| ★★★ | 受注率 | 引継ぎ商談の成約率向上を目指す |
| ★★☆ | LTV | 獲得顧客の継続率・拡大率を追跡 |
| ★★☆ | CAC | 顧客獲得コストの最適化 |
| ★☆☆ | パイプライン予測精度 | 月末着地の予測精度を向上 |
成熟期のマネジメントポイント
- 月次での戦略的振り返りと中長期計画の策定
- データドリブンな意思決定の徹底
- 後進育成と組織全体の底上げ
- 新たな施策・チャネルの開拓
フェーズ移行時の目標見直しポイント
組織フェーズが変わるタイミングでは、目標設計を抜本的に見直す必要があります。
見直しチェックリスト
- 現在のフェーズに適したKPIを選定しているか
- 目標値は過去実績に基づいて設定されているか
- メンバーの成長段階を考慮した個人目標になっているか
- 部門間連携の指標が組み込まれているか
- 測定・管理の仕組みが整備されているか
📥 テンプレートダウンロード
組織フェーズ別のKPI設計テンプレートは、本記事末尾のテンプレート集からダウンロードいただけます。自社の状況に合わせてカスタマイズしてご活用ください。
👉️Template:インサイドセールスKPI設計テンプレート(段階別)

チーム目標と個人目標の効果的な設定手順
トップダウンとボトムアップのバランス設計
目標設定には、トップダウン(経営層からの指示)とボトムアップ(現場からの積み上げ)の2つのアプローチがあります。効果的な目標設定には、両者のバランスが重要です。
トップダウンの役割
- 事業計画との整合性確保
- 組織全体の方向性の明示
- 達成すべき成果水準の設定
ボトムアップの役割
- 現場の実態を反映した現実的な目標設計
- メンバーの納得感と当事者意識の醸成
- 創意工夫による改善提案の促進
バランスを取るための手順
- 経営層が事業計画に基づくKGIを提示
- マネージャーがKGI達成に必要なKPIを設計
- メンバーと対話し、現場の実態を踏まえて調整
- 合意形成後、正式に目標を確定
個人の強み・成長段階を考慮した目標配分
チーム目標を個人に配分する際は、各メンバーの強みと成長段階を考慮することが重要です。
スキルレベル別の目標配分例
| レベル | 経験 | 目標配分の考え方 |
| 初級 | 0-6ヶ月 | 行動KPI重視(架電数、リスト消化率) |
| 中級 | 6ヶ月-1年 | 行動KPI+成果KPI(商談化率、有効商談数) |
| 上級 | 1年以上 | 成果KPI重視(受注貢献額、引継ぎ品質) |
強み・弱みを活かした役割分担
メンバーによって得意な領域は異なります。例えば、ヒアリング力が高いメンバーには複雑な案件を、架電効率が高いメンバーには大量リストの消化を担当させるなど、強みを活かした配置を検討しましょう。
達成可能性と挑戦性を両立させる目標値の決め方
目標は、達成可能でありながら挑戦的である必要があります。簡単すぎると成長がなく、難しすぎるとモチベーションが低下します。
目標値設定の目安
- ストレッチ目標:過去実績の110-120%程度
- 達成目標:過去実績の100-105%程度
- 最低ライン:過去実績の90%程度
SMARTの原則を活用
効果的な目標設定には、SMARTの原則を活用しましょう。
| 要素 | 意味 | 例 |
| Specific | 具体的 | 「商談を増やす」→「月間有効商談15件」 |
| Measurable | 測定可能 | 数値で測定できる指標を設定 |
| Achievable | 達成可能 | 過去実績を踏まえた現実的な数値 |
| Relevant | 関連性 | 事業目標との整合性を確保 |
| Time-bound | 期限設定 | 月次・四半期など期限を明確化 |
目標に対するメンバーの納得感を高める運用方法
目標設定は、設定して終わりではありません。メンバーの納得感を高め、主体的に取り組む意欲を引き出すための運用が重要です。
納得感を高めるためのポイント
- 目標の背景を説明する:なぜこの目標なのか、事業全体の中での位置づけを共有
- 達成イメージを共有する:どうすれば達成できるのか、具体的な行動プランを一緒に考える
- 進捗を可視化する:日々の進捗がリアルタイムで確認できる仕組みを整備
- 定期的な対話の機会を設ける:1on1ミーティングで課題や不安を解消
- 成功を称える文化を作る:達成時には適切に評価し、チームで共有
日次・週次・月次の進捗管理シートの作り方
日次管理シート:行動KPIのリアルタイム可視化
日次管理シートは、その日の活動をリアルタイムで可視化し、即座にアクションを取るためのツールです。
日次管理シートの必須項目
| カテゴリ | 項目 | 入力タイミング |
| 活動量 | 架電数、メール送信数 | リアルタイム |
| 成果 | 接続数、有効コンタクト数、商談設定数 | リアルタイム |
| 効率 | 接続率、商談化率(日次) | 終業時 |
| 気づき | 上手くいった点、課題点 | 終業時 |
日次管理のポイント
- 午前・午後で中間振り返りを実施
- 目標に対する進捗率をリアルタイムで確認
- 課題があれば即座にマネージャーに共有
- 翌日の行動計画を終業時に策定
週次管理シート:ボトルネック分析と改善アクション
週次管理シートは、1週間の活動を振り返り、ボトルネックを特定して改善策を検討するためのツールです。
週次管理シートの構成
【週次レビューシート構成】
週間実績サマリー
- 主要KPI(架電数、接続率、商談化率、商談設定数)の目標vs実績
2. ボトルネック分析
- 目標未達の項目とその原因仮説
- 成功した点とその要因分析
3. 改善アクション
- 来週実施する具体的な改善施策
- 施策の担当者と期限
4. 来週の重点活動
- 注力するリスト・ターゲット
- 試行するトークスクリプト・アプローチ
週次レビューミーティングの進め方
- 各メンバーが実績と振り返りを3分で共有
- マネージャーがチーム全体の傾向を分析
- ボトルネックに対する改善アイデアをディスカッション
- 来週の重点アクションを合意
月次管理シート:着地予測と戦略的軌道修正
月次管理シートは、月間目標の達成状況を評価し、必要に応じて戦略的な軌道修正を行うためのツールです。
月次管理シートの必須項目
| セクション | 内容 |
| 月間実績サマリー | 全KPIの目標vs実績、達成率 |
| 着地予測 | 月末時点の予測値と根拠 |
| 要因分析 | 達成・未達の要因を構造的に分析 |
| 部門間連携状況 | MKT・FSとの連携課題と改善策 |
| 来月の戦略 | 目標達成のための戦略・施策 |
| 個人別評価 | メンバー別の実績と育成課題 |
月次振り返りのフレームワーク
以下のフレームワークで振り返りを行うと、抜け漏れなく分析できます。
- What:何が起きたか(数値で客観的に把握)
- Why:なぜそうなったか(原因を深掘り)
- So What:だから何か(インサイトの抽出)
- Now What:これから何をするか(アクションプラン)
ダッシュボード設計のベストプラクティス
進捗管理を効率化するには、ダッシュボードを活用したリアルタイム可視化が有効です。
効果的なダッシュボードの条件
- シンプルさ:一目で状況が把握できる
- リアルタイム性:データが自動更新される
- アクション指向:何をすべきかが分かる
- 階層構造:全体→チーム→個人の順で詳細化
推奨ツール
| ツール | 特徴 | 適した組織規模 |
| Googleスプレッドシート | 無料、カスタマイズ自由 | 小規模(1-10名) |
| Excel + Power BI | 高度な分析・可視化 | 中規模(10-30名) |
| Salesforce レポート | CRM連携、自動化 | 中〜大規模 |
| 専用BIツール | 高度な分析機能 | 大規模(30名以上) |
目標未達時の分析と改善サイクル
ボトルネック特定のための分解分析手法
目標未達の原因を特定するには、KPIを分解して分析する手法が有効です。
ファネル分解分析の手順
【分解分析の例】
商談目標:月間20件
実績:月間12件(達成率60%)
↓ どこがボトルネックか?
架電数:1,200件(目標通り)
接続率:30%(目標30%→達成)
有効コンタクト:360件(目標通り)
商談化率:3.3%(目標5.5%→未達)
↓ ボトルネック特定
商談化率が目標の60%しか達成できていない
→ ヒアリング・価値提案フェーズに課題あり
分解分析のフレームワーク
| 分解軸 | 分析内容 |
| ファネル分解 | 各フェーズの転換率を分析 |
| 時間分解 | 曜日別・時間帯別の傾向を分析 |
| チャネル分解 | リード流入元別の成果を分析 |
| 担当者分解 | メンバー別の実績を分析 |
| ターゲット分解 | 業界・企業規模別の成果を分析 |
成果が出ない原因を「行動」と「質」で切り分ける
目標未達の原因は、大きく「行動量の不足」と「質の問題」に分けられます。
原因の切り分けフローチャート
目標未達
│
├─ 行動KPIは達成しているか?
│ │
│ ├─ YES → 質の問題
│ │ ・接続率が低い → リストの質、架電時間帯
│ │ ・商談化率が低い → トークスクリプト、ヒアリング
│ │ ・受注率が低い → 商談品質、引継ぎ情報
│ │
│ └─ NO → 行動量の問題
│ ・架電数が足りない → 時間の使い方、ツール活用
│ ・リスト消化が遅い → 優先順位付け、判断基準
改善アプローチの違い
| 原因 | 改善アプローチ |
| 行動量不足 | 業務効率化、リソース追加、優先順位の見直し |
| 質の問題 | スキル向上、トーク改善、ターゲット見直し |
PDCAを回すための週次・月次レビューの進め方
継続的な改善には、PDCAサイクルを回し続けることが重要です。
週次PDCAの例
| フェーズ | 活動内容 | 所要時間 |
| Plan | 先週の分析結果を踏まえ、今週の改善策を策定 | 30分 |
| Do | 改善策を実行しながら日次活動を実施 | 通常業務 |
| Check | 金曜日に週次実績を集計・分析 | 1時間 |
| Act | 週次ミーティングで振り返り、来週のアクションを決定 | 1時間 |
月次PDCAの例
| フェーズ | 活動内容 | 所要時間 |
| Plan | 月初に月間目標と重点施策を確定 | 2時間 |
| Do | 週次PDCAを回しながら月間活動を実施 | 通常業務 |
| Check | 月末に月間実績を集計・詳細分析 | 半日 |
| Act | 月次振り返り会議で戦略・目標を見直し | 2時間 |
目標修正のタイミングと判断基準
目標は一度設定したら変えないのが原則ですが、状況によっては修正が必要なケースもあります。
目標修正を検討すべきケース
- 市場環境が大きく変化した(競合参入、法規制変更など)
- リード供給量がマーケティング側の事情で大幅に変動した
- 商材・サービスに大きな変更があった
- 組織体制(人員増減)に変更があった
目標修正の判断基準
| 状況 | 判断 |
| 外部要因による一時的な変動 | 目標は維持、施策で対応 |
| 恒常的な環境変化 | 目標値を調整 |
| 当初想定の誤り | 根拠を再検証し目標を修正 |
修正時の注意点
- 安易な下方修正はメンバーのモチベーションに悪影響
- 修正理由を明確にし、チームで合意形成
- 修正後の目標達成に向けた施策も同時に策定
まとめ:科学的な目標設定で成果を最大化する
本記事では、インサイドセールスの目標設定と進捗管理について、SalesGridが提唱する科学的アプローチに基づいて解説しました。
- KGIとKPIの3階層構造:戦略KPI・戦術KPI・行動KPIで体系的に設計
- 逆算思考:受注目標から逆算して必要活動量を算出
- 組織フェーズ別の目標設計:立ち上げ期は量、成長期は効率、成熟期は収益性を重視
- 日次・週次・月次の進捗管理:階層別に適切な管理サイクルを回す
- 継続的改善:ボトルネック分析とPDCAサイクルで目標達成力を向上
次のステップ:KPI運用を定着させるために
目標設定と進捗管理の仕組みは、設計しただけでは機能しません。以下のステップで運用を定着させましょう。
定着化のためのアクションリスト
- 本記事を参考に、自社のKPI体系を設計する
- テンプレートをダウンロードし、自社用にカスタマイズする
- 日次・週次・月次の管理サイクルを決定し、カレンダーに登録する
- チームメンバーに目標設定の考え方を共有し、納得感を醸成する
- 最初の1ヶ月は試験運用とし、必要に応じて調整する
- 3ヶ月後に振り返りを行い、仕組みを改善する
関連記事・テンプレートダウンロードのご案内
本記事は、SalesGridの「インサイドセールス立ち上げ完全ガイド」シリーズの一部です。目標設定・KPI管理についてさらに深く学びたい方は、以下の関連記事もご覧ください。
関連記事
- インサイドセールスのKPI設計完全ガイド ─ 戦略・戦術・行動の3階層
- インサイドセールスの商談化率の平均値と改善手法
- 立ち上げ期・成長期・成熟期で変えるべきKPIとは?
- PDCAを回すためのインサイドセールス週次・月次レビューの進め方
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よくあるご質問
質問:インサイドセールスのKPIは何個くらい設定すべきですか?
回答:重点管理するKPIは5〜7個程度に絞ることを推奨します。多すぎると管理が煩雑になり、何を重視すべきか分からなくなります。ただし、3階層(戦略・戦術・行動)それぞれで数個ずつ設定するため、全体では15〜20個程度の指標を追跡することになります。日次で管理するのは行動KPI(架電数、接続率など)の3〜4個に絞り、週次・月次で戦術・戦略KPIを確認するサイクルが効率的です。
質問:目標値の設定根拠として、業界平均値はどこで入手できますか?
回答:業界平均値は、HubSpot Japan、Salesforce、各種調査会社のレポートなどで公開されています。ただし、業界・商材・ターゲット企業規模によって大きく異なるため、あくまで参考値として活用してください。最も信頼できる根拠は自社の過去実績です。立ち上げ期で実績がない場合は、まず1〜2ヶ月間データを蓄積し、その実績を基に目標値を設定することを推奨します。
質問:目標未達が続くメンバーへの対応はどうすればよいですか?
回答:まず、未達の原因を「行動量」と「質」で切り分けて分析してください。行動量が不足している場合は、業務の優先順位や時間の使い方を見直します。質に課題がある場合は、録音分析などでボトルネックを特定し、該当スキルの強化に取り組みます。いずれの場合も、一方的に指導するのではなく、1on1ミーティングで本人の認識や課題感を聞き、一緒に改善策を考える姿勢が重要です。短期で成果が出なくても、成長の兆しが見えているかを評価しましょう。
質問:マーケティング部門やフィールドセールス部門と目標が対立する場合はどうすればよいですか?
回答:部門間で目標が対立する場合、多くは「指標の定義」や「評価基準」が曖昧なことが原因です。まず、リードの定義、商談化の基準、引き継ぎ条件などを明文化し、全部門で合意形成を図りましょう。また、部門ごとの個別最適ではなく、「受注」という最終ゴールに向けた全体最適の視点で目標を設計することが重要です。定期的な連携ミーティングを設け、お互いの状況と課題を共有する場を作ることで、対立ではなく協力の関係を構築できます。
質問:CRMやSFAを導入していない場合、進捗管理はどうすればよいですか?
回答:CRMやSFAがなくても、GoogleスプレッドシートやExcelで進捗管理は十分可能です。本記事で紹介したテンプレートをベースに、日次の活動記録と週次・月次の集計を行う仕組みを作りましょう。ただし、データの手入力には限界があるため、組織が5名を超える規模になったらCRM/SFAの導入を検討することを推奨します。導入時は、進捗管理に必要な項目を明確にしてから選定することで、ツールを使いこなせないという事態を防げます。

