インサイドセールスのフィールドセールスとの対立を解消する|連携課題の根本解決
「インサイドセールスからトスアップされたリードの質が低い」「フィールドセールスは現場の状況を理解していない」──このような声が営業組織内で飛び交っていませんか。
The Model型の分業体制を導入する企業が増える中、インサイドセールスとフィールドセールスの対立は多くの営業組織が直面する深刻な課題となっています。本来、両部門は顧客の課題解決という共通の目標に向かって協力すべき存在です。しかし現実には、役割の曖昧さや評価指標の不整合、情報共有の断絶などが原因で、対立構造が生まれてしまうケースが後を絶ちません。
本記事では、SalesGridが提唱する「営業を科学する」アプローチに基づき、インサイドセールスとフィールドセールスの対立が生まれる根本原因を解明し、連携課題を解決するための具体的な方法を解説します。分業体制のメリットを最大化し、営業組織全体の成果向上を実現するための実践的なノウハウをお伝えします。
インサイドセールスとフィールドセールスの対立はなぜ起きるのか
インサイドセールスとフィールドセールスの連携がうまくいかない組織には、共通する構造的な問題が存在します。対立を解消するためには、まずその根本原因を正しく理解することが必要です。
分業体制がもたらす「見えない壁」の正体
The Model型組織では、マーケティングがリードを獲得し、インサイドセールスが見込み顧客を育成・選別し、フィールドセールスがクロージングを担当するという分業体制が基本となります。この分業は営業プロセスの効率化に大きく貢献する一方で、各部門が自分たちの領域だけに集中しがちになるという副作用を生みます。
分業体制の本質的な課題は、顧客との接点が分断されることにあります。インサイドセールスは電話やメール、オンラインでのコミュニケーションを通じて見込み顧客と接触しますが、対面での商談は経験しません。一方、フィールドセールスは商談以降の顧客としか接点を持たないため、リード獲得から育成に至るプロセスを実感として理解しにくい状況が生まれます。
この「見えない壁」が、互いの業務への理解不足を招き、対立の温床となるのです。
対立を引き起こす5つの根本原因
インサイドセールスとフィールドセールスの対立には、以下の5つの根本原因が存在します。
① 役割定義の曖昧さ
「どこまでがインサイドセールスの仕事で、どこからがフィールドセールスの仕事なのか」──この境界線が曖昧な組織では、必ず対立が発生します。特にトスアップの基準が明確でない場合、インサイドセールスは「十分に育成した」と考えていても、フィールドセールスからは「まだ商談化できる状態ではない」と判断されることがあります。
② 評価指標の不整合
インサイドセールスのKPIが「商談創出数」や「トスアップ件数」に設定されている一方で、フィールドセールスは「受注率」や「売上」で評価される──このような評価指標の不整合は、両部門の行動を異なる方向に向かわせます。インサイドセールスは数を追求し、フィールドセールスは質を求めるという構造的な対立が生まれるのです。
③ 情報共有の断絶
顧客情報やヒアリング内容がきちんと引き継がれない場合、フィールドセールスは商談の場で同じ質問を繰り返すことになります。これは顧客体験を損なうだけでなく、「インサイドセールスは必要な情報を取得していない」という不満をフィールドセールス側に生み出します。
④ リード品質への認識差
何をもって「確度の高いリード」とするかの認識が両部門で異なることも、対立の大きな要因です。インサイドセールスが「興味を示している」と判断しても、フィールドセールスからすると「予算も決裁権もない見込み顧客」と映ることは珍しくありません。
⑤ 成果帰属の不明確さ
受注に至った案件の成果を誰に帰属させるかが曖昧な場合、互いの貢献を認め合えない状況が生まれます。「この受注はフィールドセールスの力」「いや、インサイドセールスが育成したからこそ」という不毛な議論が繰り返されることになります。
対立が組織にもたらす具体的な損失
インサイドセールスとフィールドセールスの対立は、単なる部門間の軋轢にとどまらず、営業組織全体に深刻な損失をもたらします。
| 影響領域 | 具体的な損失 | 定量的インパクト |
| 商談化率 | トスアップ後の商談化率が低下 | 20〜40%の機会損失 |
| 受注率 | 引き継ぎ不備による受注率低下 | 10〜25%の低下 |
| 顧客体験 | 一貫性のないコミュニケーション | NPS・満足度の悪化 |
| 営業効率 | 重複作業・手戻りの発生 | 工数の15〜30%が無駄に |
| 人材定着 | モチベーション低下・離職 | 離職率の上昇 |
| 組織文化 | 部門間の協力意識低下 | 組織全体の生産性低下 |
これらの損失は、分業体制がもたらすべきメリットを大きく相殺してしまいます。対立を放置することは、営業組織の競争力を著しく低下させることを意味するのです。
【失敗要因分析】連携がうまくいかない組織の共通点
対立を解消するためには、なぜ連携がうまくいかないのかを正確に把握する必要があります。ここでは、連携に失敗している組織に共通する要因を分析します。
「トスアップ」の定義が曖昧な組織の末路
「トスアップ」という言葉自体は多くの組織で使われていますが、その定義が明確でない組織は驚くほど多いのが実態です。
トスアップ基準が属人化している組織では、以下のような問題が発生します。
- インサイドセールス担当者によってトスアップのタイミングがバラバラ
- フィールドセールスが期待する情報がトスアップ時に揃っていない
- 「アポイントが取れた」だけでトスアップされ、確度の低い商談が量産される
- ホットリードとそうでないリードの区別がつかない
ある企業では、インサイドセールスが「電話で前向きな反応があった」という理由だけでトスアップを行っていました。しかし実際には、予算確保の目処も立っておらず、決裁者へのアプローチもできていない状態でした。フィールドセールスが訪問しても商談には発展せず、「インサイドセールスの質が低い」という評価につながってしまったのです。
KPI設計の失敗がもたらす部門間対立
評価指標の設計は、部門間連携の成否を左右する極めて重要な要素です。KPI設計の失敗パターンとして、以下のようなケースが挙げられます。
失敗パターン1:相反するKPIの設定
| 部門 | 設定されているKPI | 行動への影響 |
| インサイドセールス | 商談創出件数 | 数を優先し、質を犠牲にしがち |
| フィールドセールス | 受注率 | 確度の低い商談を敬遠 |
このような設計では、インサイドセールスは「とにかく数をこなす」方向に動機づけられ、フィールドセールスは「受注率を下げるような商談は受けたくない」と考えるようになります。
失敗パターン2:プロセス全体を見ない部分最適
各部門が自分たちのKPIだけを追求し、営業プロセス全体の成果に責任を持たない設計も問題です。マーケティングはリード獲得数、インサイドセールスは商談創出数、フィールドセールスは受注金額──それぞれが別々の指標を追いかけ、プロセス全体の効率化や受注までのリードタイムには誰も関心を持たないという状況が生まれます。
ツール導入だけでは解決しない理由
「SFAやCRMを導入すれば連携が改善する」──このような期待を持つ企業は少なくありませんが、ツールだけで対立が解消することはありません。
ツール導入が失敗する典型的なパターンは以下の通りです。
① 入力ルールが統一されていない
顧客情報や商談情報の入力基準がバラバラでは、データの信頼性が担保されません。インサイドセールスが入力した情報をフィールドセールスが信用しない、あるいはその逆という状況が生まれます。
② 活用目的が共有されていない
「何のためにこのツールを使うのか」が部門間で共有されていないと、ツールは単なる報告のための道具に成り下がります。情報共有や連携強化という本来の目的が見失われてしまうのです。
③ 運用プロセスが設計されていない
ツールを導入しても、それをどのタイミングで、誰が、どのように活用するかというプロセスが設計されていなければ、宝の持ち腐れとなります。
ツールはあくまで連携を支援する手段であり、連携の仕組みそのものではありません。まず組織としての連携プロセスを設計し、それを支援するツールとしてSFAやCRMを活用するという順序が重要です。
対立解消のための3つのステップ|科学的アプローチ
ここからは、インサイドセールスとフィールドセールスの対立を解消するための具体的なステップを解説します。SalesGridが提唱する科学的アプローチに基づき、再現性のある方法をお伝えします。
Step1|役割と責任範囲の再定義
対立解消の第一歩は、両部門の役割と責任範囲を明確に定義し直すことです。曖昧な境界線を放置したまま連携を強化しようとしても、根本的な解決にはなりません。
役割定義のフレームワーク
以下の観点から、インサイドセールスとフィールドセールスそれぞれの役割を明文化します。
| 定義項目 | インサイドセールス | フィールドセールス |
| 主要ミッション | 見込み顧客の発掘・育成・選別 | 商談推進・クロージング |
| 担当フェーズ | リード獲得〜商談化判定 | 商談化〜受注・契約 |
| 主要KPI | 商談創出数、SQL数、BANT取得率 | 受注率、受注金額、商談進捗 |
| コミュニケーション手段 | 電話、メール、オンライン | 対面訪問、オンライン商談 |
| 取得すべき情報 | BANT情報、課題・ニーズ | 詳細要件、競合状況、導入障壁 |
トスアップ基準の明確化
特に重要なのは、どのような状態になったらトスアップするかの基準を明確にすることです。BANT(Budget:予算、Authority:決裁権、Need:必要性、Timeline:導入時期)情報を基準とするのが一般的ですが、自社の商材や営業プロセスに合わせてカスタマイズすることが重要です。
【トスアップ基準の例】
□ 予算:概算予算が確認できている、または予算化の目処が立っている
□ 決裁:決裁者または決裁に影響力のある人物と接触できている
□ 必要性:具体的な課題・ニーズが言語化されている
□ 時期:導入検討時期が6ヶ月以内である
□ その他:競合検討状況が把握できている
これらの基準を満たしたリードのみをトスアップすることで、フィールドセールスが受け取る商談の質が担保されます。
Step2|共通KPIと評価制度の設計
役割定義が明確になったら、次は両部門が同じ方向を向くための評価制度を設計します。
共通KPIの設定
部門ごとの個別KPIに加えて、両部門が共同で責任を持つ共通KPIを設定することが効果的です。
| KPI種別 | 指標例 | 対象部門 |
| 共通KPI | トスアップ後受注率 | IS・FS共同 |
| 共通KPI | リードタイム(初回接触〜受注) | IS・FS共同 |
| 共通KPI | 顧客満足度(営業プロセス全体) | IS・FS共同 |
| 個別KPI | 商談創出数、BANT取得率 | IS |
| 個別KPI | 受注金額、案件単価 | FS |
共通KPIを設定することで、「インサイドセールスがトスアップしたリードをフィールドセールスが受注できなければ、両方の評価に影響する」という構造を作り出せます。これにより、互いの成功が自分の成功につながるという協力関係が生まれます。
評価制度への反映
KPIは設定するだけでなく、評価制度に正しく反映させることが重要です。以下のような設計を検討してください。
- 個人評価の30〜40%を共通KPIで評価
- 四半期ごとに共通KPIの達成状況をレビュー
- 連携貢献度(相互フィードバックの質など)を定性評価に組み込む
Step3|情報共有プロセスの標準化
役割と評価制度が整ったら、情報共有のプロセスを標準化します。属人的な引き継ぎでは、情報の質にばらつきが生じ、連携の安定性が担保されません。
顧客情報の共有ルール
以下の情報を、どのタイミングで、どのように共有するかを明文化します。
| 情報カテゴリ | 共有項目 | 入力タイミング | 共有方法 |
| 基本情報 | 企業情報、担当者情報 | 初回接触時 | CRM/SFA |
| BANT情報 | 予算、決裁者、ニーズ、時期 | ヒアリング時 | CRM/SFA |
| 接触履歴 | 通話内容、メール履歴 | 都度 | CRM/SFA |
| 課題・背景 | 顧客の課題、導入背景、期待 | トスアップ時 | 引き継ぎメモ |
| 競合状況 | 検討中の競合、比較ポイント | 判明時 | CRM/SFA |
引き継ぎフローの設計
トスアップ時の引き継ぎは、特に丁寧に設計する必要があります。
【引き継ぎフローの例】
1. インサイドセールスがCRMにトスアップ情報を入力
2. 引き継ぎメモを作成し、フィールドセールスに共有
3. 必要に応じて口頭での引き継ぎミーティングを実施(15分程度)
4. フィールドセールスが内容を確認し、不明点があれば質問
5. 双方が合意した上で、正式にトスアップ完了
このようなフローを標準化することで、引き継ぎの漏れや認識のずれを防ぐことができます。
トスアップ品質を高める具体的な方法
対立解消の鍵を握るのは、トスアップの品質です。ここでは、フィールドセールスが「受け取りたい」と思えるトスアップを実現するための具体的な方法を解説します。
商談化基準(SQL定義)の明確化と合意形成
SQL(Sales Qualified Lead:営業が対応すべき見込み顧客)の定義は、インサイドセールスとフィールドセールスが共同で作成することが重要です。一方的に決めた基準では、現場での納得感が得られません。
SQL定義のワークショップ手順
- 現状分析:過去の受注案件・失注案件の特徴を分析
- 仮説立案:受注確度を高める要素を仮説として洗い出し
- 合意形成:両部門で議論し、SQL基準を決定
- 運用開始:基準に基づいてトスアップを実施
- 検証・改善:定期的に基準の妥当性を検証し、必要に応じて修正
BANT以外で確認すべき情報
BANT情報に加えて、以下のような情報も取得できていると、商談の質が大きく向上します。
- 現状の課題と影響:課題が解決されないことで、どのような影響が出ているか
- 理想の状態:顧客が目指している姿、達成したい目標
- 検討のきっかけ:なぜ今このタイミングで検討を始めたのか
- 意思決定プロセス:社内でどのような流れで意思決定されるか
- 過去の導入経験:類似製品・サービスの導入経験と評価
引き継ぎメモの標準フォーマット設計
口頭での引き継ぎだけでは情報が漏れやすく、フィールドセールスが商談準備に時間を要することになります。標準化された引き継ぎメモを活用することで、この問題を解決できます。
引き継ぎメモテンプレート
【引き継ぎメモ】
■ 基本情報
・企業名:
・担当者名/役職:
・連絡先:
・商談日時:
■ BANT情報
・Budget(予算):
・Authority(決裁者):
・Need(ニーズ):
・Timeline(時期):
■ 顧客の状況
・現状の課題:
・課題の背景・原因:
・課題による影響:
・期待する効果:
■ 検討状況
・検討のきっかけ:
・競合検討状況:
・懸念事項・障壁:
・意思決定プロセス:
■ これまでの接触履歴(要点)
・初回接触日:
・主なやり取りの内容:
・顧客の反応・温度感:
■ 商談時のポイント・注意事項
・強調すべき価値:
・避けるべき話題:
・その他特記事項:
このようなフォーマットを全員が使用することで、引き継ぎの質が均一化され、フィールドセールスが商談に臨む際の準備効率も向上します。
引き継ぎ商談の品質スコア化と改善サイクル
トスアップ品質を継続的に向上させるためには、品質を定量的に測定し、改善サイクルを回す仕組みが必要です。
品質スコアの設計例
| 評価項目 | 配点 | 評価基準 |
| BANT情報の完成度 | 20点 | 4項目×5点 |
| 課題・背景の明確さ | 15点 | 具体的かつ詳細に記載 |
| 競合情報の有無 | 10点 | 検討状況が把握できている |
| 決裁プロセスの把握 | 10点 | 意思決定フローが明確 |
| 引き継ぎメモの完成度 | 15点 | 必要項目が漏れなく記載 |
| 商談後のFS評価 | 30点 | 商談後にFSが評価 |
改善サイクルの運用
- 週次:トスアップ案件の品質スコアを集計
- 月次:スコアの傾向分析、低スコア案件の要因分析
- 四半期:トスアップ基準・プロセスの見直し
フィールドセールスからのフィードバックを品質スコアに組み込むことで、「フィールドセールスが求める情報は何か」をインサイドセールスが学習できる仕組みになります。
連携強化を実現する組織設計と仕組みづくり
役割定義、KPI設計、情報共有プロセスが整ったら、それらを持続的に機能させるための組織的な仕組みを構築します。
定期的な連携ミーティングの設計と運用
インサイドセールスとフィールドセールスの連携を維持・強化するためには、定期的なコミュニケーションの場が不可欠です。
週次連携ミーティング
| 項目 | 内容 |
| 頻度 | 週1回、30〜45分 |
| 参加者 | IS担当者、FS担当者、各マネージャー |
| 目的 | 案件状況の共有、直近課題の解決 |
アジェンダ例
- 今週のトスアップ案件の状況確認(10分)
- 進行中商談の課題・支援依頼(10分)
- 来週のトスアップ予定共有(5分)
- 連携課題のディスカッション(15分)
月次連携ミーティング
| 項目 | 内容 |
| 頻度 | 月1回、60〜90分 |
| 参加者 | IS/FSマネージャー、営業責任者 |
| 目的 | KPI振り返り、プロセス改善 |
アジェンダ例
- 月間KPI実績の共有と分析(20分)
- トスアップ品質スコアの振り返り(15分)
- 成功事例・失敗事例の共有(20分)
- 改善施策の検討・決定(25分)
相互フィードバック制度の導入
フィールドセールスからインサイドセールスへ、インサイドセールスからフィールドセールスへ、双方向のフィードバックが行われる仕組みを構築します。
フィードバックのポイント
- 具体的に:「引き継ぎが不十分」ではなく「〇〇の情報があると商談が進めやすい」
- 建設的に:批判ではなく、改善に向けた提案として伝える
- タイムリーに:商談直後など、記憶が新しいうちにフィードバック
- 定期的に:単発ではなく、継続的にフィードバックの機会を設ける
フィードバックシートの活用
商談後にフィールドセールスが記入するフィードバックシートを運用することで、フィードバックの習慣化と内容の標準化が可能になります。
【商談後フィードバックシート】
・案件名:
・商談日:
・商談結果:□進行 □保留 □失注
■ トスアップ評価(5段階)
・BANT情報の正確性:★★★★★
・課題把握の深さ:★★★★★
・引き継ぎメモの充実度:★★★★★
・総合評価:★★★★★
■ 良かった点:
■ 改善してほしい点:
■ 次回から取得してほしい情報:
マーケティング部門を含めた三位一体の連携体制
インサイドセールスとフィールドセールスの連携だけでなく、マーケティング部門を含めた三位一体の連携体制を構築することで、リード獲得から受注までの営業プロセス全体を最適化できます。
三部門連携のポイント
| 連携ポイント | 内容 |
| リード品質の定義 | MQL(Marketing Qualified Lead)の基準を三部門で合意 |
| 情報のフィードバック | 商談・受注状況をマーケティングにフィードバック |
| コンテンツ連携 | 商談で必要な資料・コンテンツをマーケティングが作成 |
| 施策の連動 | イベント・セミナー後のフォローを連携して実施 |
マーケティングが獲得したリードの質、インサイドセールスのナーチャリング効果、フィールドセールスの受注状況──これらのデータを三部門で共有し、分析することで、ボトルネックの特定と改善が可能になります。
連携課題の解消に向けた検討チェックリスト
ここまで解説してきた内容を踏まえ、自社の連携状況を診断するためのチェックリストを提供します。
現状診断|あなたの組織の連携レベルを確認
以下の10項目について、自社の状況をチェックしてみてください。
【役割定義】
- □ インサイドセールスとフィールドセールスの役割が明文化されている
- □ トスアップ基準(SQL定義)が両部門で合意されている
【評価制度】
- □ 両部門が共同で責任を持つ共通KPIが設定されている
- □ 評価制度が協力を促進する設計になっている
【情報共有】
- □ 顧客情報の入力ルールが統一されている
- □ 引き継ぎメモの標準フォーマットが運用されている
【コミュニケーション】
- □ 定期的な連携ミーティングが実施されている
- □ 相互フィードバックの仕組みが機能している
【改善サイクル】
- □ トスアップ品質が定量的に測定されている
- □ 連携課題の改善に向けたPDCAが回っている
診断結果
| チェック数 | 連携レベル | 推奨アクション |
| 8〜10個 | 優良 | 継続的な改善と新たな施策への挑戦 |
| 5〜7個 | 良好 | 不足項目の強化、仕組みの定着 |
| 3〜4個 | 要改善 | 優先度の高い項目から着手 |
| 0〜2個 | 要注意 | 抜本的な見直しが必要 |
優先的に対応すべき課題の特定方法
すべての課題に同時に取り組むことは現実的ではありません。以下のマトリクスを使って、優先的に対応すべき課題を特定しましょう。
| 影響度:大 | 影響度:小 | |
| 緊急度:高 | 【最優先】即座に対応 | 【要対応】計画的に対応 |
| 緊急度:低 | 【重要】中期的に対応 | 【検討】余裕があれば対応 |
影響度の判断基準
- 受注率・商談化率への影響が大きい
- 顧客体験への影響が大きい
- 組織のモチベーション・離職に影響する
緊急度の判断基準
- 現在進行形で問題が発生している
- 対応が遅れると影響が拡大する
- 短期間で改善効果が見込める
まとめ:対立から協働へ──持続的な連携体制の構築に向けて
インサイドセールスとフィールドセールスの対立は、多くの営業組織が直面する構造的な課題です。しかし、この対立は解消可能であり、むしろ連携強化によって営業組織全体の成果を大きく向上させることができます。
本記事で解説した対立解消のポイントを整理します。
対立の根本原因を理解する
- 役割定義の曖昧さ
- 評価指標の不整合
- 情報共有の断絶
- リード品質への認識差
- 成果帰属の不明確さ
対立解消の3つのステップ
- 役割と責任範囲の再定義:トスアップ基準を両部門で合意
- 共通KPIと評価制度の設計:協力を促進する評価の仕組み
- 情報共有プロセスの標準化:引き継ぎの質を均一化
連携を持続させる仕組み
- 定期的な連携ミーティングの運用
- 相互フィードバック制度の導入
- マーケティングを含めた三位一体の連携体制
インサイドセールスとフィールドセールスは、本来対立する存在ではありません。顧客の課題解決という共通の目標に向かって、それぞれの強みを活かして協力すべきパートナーです。
SalesGridが提唱する「営業を科学する」アプローチは、属人的な対応や感覚的な判断を排除し、データと仕組みに基づいた再現性のある連携体制の構築を目指します。本記事で紹介した方法を参考に、ぜひ自社の連携強化に取り組んでください。
よくあるご質問
質問:インサイドセールスとフィールドセールスの対立は、どの組織でも起きるものですか?
回答:分業体制を採用している組織では、程度の差こそあれ、対立や摩擦が生じやすい構造があります。これは両部門の担当者に問題があるわけではなく、分業体制そのものが持つ構造的な課題です。重要なのは、対立が起きること自体を問題視するのではなく、対立を解消し協力関係を構築するための仕組みを整えることです。役割定義、評価制度、情報共有プロセスを適切に設計することで、多くの対立は予防・解消できます。
質問:トスアップ基準を厳しくすると、インサイドセールスの商談創出数が減ってしまいませんか?
回答:短期的には商談創出数が減少する可能性がありますが、中長期的には組織全体の成果向上につながります。確度の低いトスアップを繰り返すと、フィールドセールスの工数が無駄になり、受注率も低下します。重要なのは、トスアップ基準を厳しくすると同時に、インサイドセールスの評価指標も見直すことです。商談創出「数」だけでなく、トスアップ後受注率などの「質」を反映した評価制度に変更することで、インサイドセールスのモチベーション低下を防ぎながら、組織全体の成果を最大化できます。
質問:両部門の関係がすでに悪化している場合、どこから手をつければよいですか?
回答:関係が悪化している場合、まず経営層や営業責任者が両部門の間に入り、対話の場を設けることが重要です。いきなりプロセス改善に取り組むのではなく、まずは「なぜ対立が起きているのか」「互いに何を求めているのか」を率直に話し合う場を作りましょう。その上で、共通の目標(例:受注金額の最大化)を再確認し、その目標達成のために両部門が協力する必要があることを共有します。感情的なわだかまりを解消した上で、役割定義やKPI設計などの具体的な改善に着手することをお勧めします。
質問:小規模な組織でも、連携強化の仕組みは必要ですか?
回答:小規模な組織でも、連携の仕組みは重要です。むしろ小規模なうちに仕組みを整えておくことで、組織が拡大した際にもスムーズに連携を維持できます。ただし、小規模組織では形式的な会議体やドキュメントに過度にこだわる必要はありません。トスアップ基準の明確化と、シンプルな引き継ぎルールの設定から始め、組織の成長に合わせて仕組みを拡充していくアプローチが効果的です。重要なのは、役割の境界線を曖昧にしないこと、情報共有をおろそかにしないことの2点です。
質問:連携改善の効果はどのくらいの期間で現れますか?
回答:改善施策の内容によって異なりますが、一般的には以下のような期間感を目安にできます。トスアップ基準の明確化や引き継ぎメモの標準化など、比較的シンプルな施策は1〜2ヶ月で効果が現れ始めます。評価制度の変更や組織文化の改善など、より根本的な施策は3〜6ヶ月程度の期間が必要です。重要なのは、短期間で劇的な改善を期待するのではなく、継続的な改善サイクルを回すことです。月次でKPIを確認し、四半期ごとにプロセスを見直すことで、着実に連携レベルを向上させることができます。

