Report:“コール音声と引き継ぎメモはどうしてる?”受注金額を2倍にする『受注目線』の商談引き継ぎ
BtoB営業において、受注確度を高める「引き継ぎ」の精度は、成果を左右する重要な要素です。今回のSalesProtocolでは、受注金額を2倍に引き上げたインサイドセールス(以下IS)とフィールドセールス(以下FS)の連携術を軸に、「受注から逆算する引き継ぎ設計」の実践ノウハウを共有しました。
SalesProtocolに登壇いただいたのは、株式会社PKSHA Technologyの加藤氏。これまでにSaaS企業でのエンタープライズ向けのISやFSの現場とマネジメント両面での経験を持ち、音声や非言語情報の活用まで踏み込んだ実践知は、まさに「すぐに活用できる」内容です。
第一部|オープニング・なぜ今、受注から逆算するインサイドセールス業務が必要か

この動画で語っていただけたポイントは、受注をゴールとしたIS・FS間の「共通言語」を持つこと。加藤氏が語るのは、「ISとFSの引き継ぎは、単なるメモやCRMの記載だけでは不十分」という問題意識でした。
特に注目すべきは、潜在層のリードに対する引き継ぎのあり方。表面的な情報だけではFSが受注に向けたアプローチをしづらく、ISがせっかく育てたリードが失注してしまうケースも少なくありません。
加藤氏は、ISが「受注されるべきリードを、受注されるべき情報とともに引き渡す」ための視点転換が不可欠だと語ります。

第二部|受注目線で提供すべき引き継ぎ情報とは

ここで提示されたのが、「FSが読み解ける引き継ぎ情報の4つの柱」です。
- 顧客の意思決定者の構造と力関係
- 顧客が感じている課題の真因
- 購買プロセスにおける現在位置
- 過去の会話に表れた非言語的な温度感(推進力、トーンなど)
特に印象的だったのは、「音声の引き継ぎ」の活用が「事業目線の引き継ぎ設計」に直結しているという点です。
加藤氏が繰り返し強調したのは、「FS個人の短期受注目線ではなく、事業全体として顧客の信頼と興味を醸成するための商談設計が必要だ」ということでした。
FSはどうしても「今期の受注」を追う立場にあり、短期的な成果にフォーカスしがちです。
しかし、ISが提供すべき引き継ぎ情報は、「すぐに受注するための情報」ではなく、「将来的に顧客との関係を深め、事業として価値を積み上げていくための情報」であるべきだといいます。
加藤氏は次のように語りました。
「信頼関係や興味の醸成を目的に、商談の中でどんな項目を聞いてもらうか──。ここを意識して引き継げる組織は、短期と中長期の成果を両立できます。」
この考え方に基づけば、引き継ぎの主眼は「次のアクションを促すための事実共有」ではなく、「未来の受注につながる文脈の共有」にあります。
たとえば、商談時に顧客が「興味を示したテーマ」、「まだ課題と認識していないが反応があった話題」、「社内検討で影響を与えそうな人材」といった情報は、短期受注とは直接結びつかなくとも、後の機会を創出する重要な伏線となります。
つまり、ISが拾うべきは「受注の兆し」だけではなく、「関係性の育成の芽」。
その芽を丁寧に引き継ぐことで、営業組織全体が「信頼資産」を積み上げ、結果として事業成長に直結する循環をつくり出せるのです。
第三部|引き継ぎ改善のプロセス/KPI設計/体験設計の現場例

加藤氏は、「受注金額を2倍にした」実績を支えた改善プロセスとして、以下のステップを紹介しています。
- ステップ1:引き継ぎ情報の粒度・区分の整理(ファクト/推測/感触)
- ステップ2:音声データの共有体制の整備(FSがすぐアクセスできる仕組み)
- ステップ3:成果と結びつくKPIの設計(例:音声確認率、引き継ぎ再生率、温度感一致率)
KPIの設計については、単なる「情報を埋める」というチェックリスト的な発想ではなく、「どの層に対してどうアプローチし、結果的に何件の商談・受注につながったか」という「再現性」重視の設計が重要です。
また、取り扱っている商材のPMF(プロダクトマーケットフィット)状況に応じた引き継ぎの「重みづけ」も重要であり、「検討層」にはBANT的項目(※)の精度、「潜在層」には探索的ヒアリングの質が求められます。

※補足:BANT的項目とは
BANT(Budget/Authority/Need/Timing)に基づく基礎確認のこと。すなわち①予算の有無と規模②決裁者・影響者③解決すべき課題と期待成果④導入時期の整合を指します。顕在層では有効ですが、潜在層ではこれだけでは不十分なため、示唆質問や仮説検証での補完が必要です。
第四部|インサイドセールスの再定義と3つのアクション提案

終盤、加藤氏が語ったISの新しい役割定義は、「司令塔」そのものでした。
「ISはただのアポ獲得屋ではない。営業組織全体を俯瞰し、正しい優先順位で、正しいリードに、正しいストーリーでアプローチを指揮する立場にある」
この言葉に共感を覚えた方も多いのではないでしょうか。
そして、さらにIS・FSチームへの3つの提案として、加藤氏は以下を挙げています。
- 音声データを活用するカルチャーの醸成
- 顧客の“温度感”を伝えるための新しい引き継ぎ設計
- データと感覚の“両輪”で商談準備の精度を高めるチーム設計
これらのアクションを実践したチームが、成果を積み上げていく姿が目に浮かびます。
まとめ:音声×感覚×データが、営業の“引き継ぎ”を進化させる

この動画は、単なるトークセッションではありません。実践から導かれた改善プロセスと、営業組織の本質的な課題を直視した「示唆の宝庫」です。
特に、IS・FS間の「温度感」のズレを解消するヒントを得たい方、商談の質を一段上げたい方にとって、視聴する価値は十分すぎるほどあります。
営業成果に直結する「引き継ぎ設計」の再構築を考えるなら、まずはこの動画をご視聴いただき、加藤氏の実践的な知見に触れてみてください。
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